私は彼の事が気になりBARのマスターに尋ねた

「ああ、ケンちゃんの事かい?」

この店のマスターとは付き合いが古い
初めて訪れたのは会社の忘年会の2次会だった
その時、学生時代流行っていたTCG、マッスル・ザ・ゲート
通称MTG
その話で盛り上がって以来贔屓にさせてもらっている
MTGは私が社会人になっても続けている数少ない趣味の一つである

「なんか嫌な思いさせちゃったかい?彼は口が悪いからね、私が代わりに謝るよ」

確かに口は悪かったが、私は小肥りの方が気になった
それに彼の言葉に悪意は感じなかったので、私は不思議と不快には感じていなかった

「実はね、彼もMTGをやっているんだよ、年齢も君と同じ位じゃないかな、ほら」

そういいながらマスターは何かの雑誌の切り抜きを見せてくれた
そこには高々と優勝カップを掲げた彼が写っていた

「いや、正確にはやっていた、、、かな、今はもう、、、」

マスターの表情が曇った

「つまらない、話をしてしまったね、ゴメンよ」

そう言い残し、マスターは厨房へ消えた
やっていた、、、?
別に同い年くらいの人間であればやっていてもおかしくないほどMTGは流行っていた
そして進学や就職と同時に辞めていった仲間は大勢いる
別にやめた事については珍しい事ではないと思うのだが、何でマスターはあんなに意味深に言ったのだろう?
そんなモヤモヤした気持ちを抱えながら、その日は店を後にした

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